「健康」「介護・介護予防」「住まい」のシニア・シルバー層の新市場情報


 ネット すこやかLife


  有料老人ホーム・事業者アンケート(08年3月)  


●入居者の視点を重視●
〜使命感とビジネスの狭間で〜


 「月刊すこやかLife」(ニューマガジン社発行)では、関西地区で運営する約350の有料老人ホーム(施設長宛て)に対して2008年3月にアンケート調査を行った。有効回答数は37ホーム。
 各回答からは、「入居者の介護や生活の確保」という使命と、「現在の介護報酬ではギリギリ」というビジネス的側面とに悩む姿が垣間見られた。また、わが国の高齢問題については、現在の厚生労働省や行政の対応に一定の財政破綻への理解は示しつつも、このままの制度を続けていけば、どこにも行けなくなる「介護難民が必ず生じる」との強い危機感がうかがわれた。
 一方、ビジネス的な側面では、有料老人ホームの急増は確実に新しい市場を形成しつつあり、介護や医療・薬系、食系といった関連業種はもちろん、趣味や講座など多様な業種とのコラボレートも進行しつつあるようだ。



安心と個性の尊重
〜地域住民のふれあい大切に〜


■「貴社(団体)のホームで入居者の方々のために最も重視しているセールスポイントはどのようなことでしょうか」
 全般的には「安心」、「入居者の個性を尊重」、「食事やレクリエーションへの配慮」などのキーワードを重視していることがうかがわれる。
 中でも「安心」はほとんどのホームが最も大切だと考えていることで、具体的には施設面と介護体制面とに大別される。施設面では間取りや空間の設け方や手すりの配置などきめ細かな配慮があるようだ。
 介護体制面は介護型のホームのすべてが最も重視していることで、「地域の医療機関との連携」や「介護職員の確保」が柱となっている。介護予防のためのパワーリハビリテーションを実施しているところもあった。
 入居者の個性の尊重も多くのホームがセールスポイントと考えていることで、「家庭的雰囲気を大切」にしたり、「あいさつ、そうじに気遣う」、「外出を積極的に手伝う」など多様な形となっている。
 食事面では「社員の手作り調理と安全な衛生体制」のような家庭派と「栄養面、抗酸化作用に優れたおいしい食事」のように抗加齢的要素を重視した2つの側面が見られた。


■「ホームと地域住民の人たちがふれあう環境や機会、あるいは行事などはありますか。それはどのようなものでしょうか」
 地域住民とのふれあいはホームのほとんどが重視していると回答した。多くの消費者は現実にはホームとのふれあいはほとんど感じておらず、この点はホームと地域住民との間に大きなギャップがあるといえそうだ。
 ホームが行っている地域とのふれあいの具体的な方法は「園児や小学生とのふれあい」と「地域イベントへの参加」に分かれた。
 イベントでは、地元自治会や老人会と連携し、介護研修会、夏祭りなどを行っている。介護相談所を開設して地域の相談にのっている所も少なくない。
 近隣の小学校や保育園との催しに出席したり、企画を考えるところも多く回答があった。その中で小学生はふれあいの会を機会に、その後入居者の人たちに折紙を教わりに来所するようになったホームもある。
 こうしたホームと地域住民とのふれあいは単にホームの経済的な面だけでなく、これからの日本の高齢社会をみんなでどのように乗り切っていく方法があるのか、考えるための大きなヒントも秘めていそうだ。



介護職員の不足は
〜「安い給料」と「厳しい仕事」〜


■「ヘルパーや作業に従事する職員の人たちの確保は十分でしょうか。もし困っているとしたら、それはなぜでしょうか」
 ホームの運営体制に直結する微妙な質問であるため、素直な回答が危惧されたが、結果的には過半数のホームが、ヘルパーや介護職員の確保に苦慮していると回答した。
 中には率直に介護職員の不足によって満足なサービスが出来かねない状況が続いていると答えたところもある。こうした介護労働力不足の要因としては、「介護現場の作業がきつい」ということと、「給料が安い」の2点に集約される。
 作業のきつさは本人の自覚や仕事のやりがいでクリアされるケースも少なくないが、給料の安さは現在の介護報酬では給料を十分に出せる経営環境ではなく、このままではどこのホームも質の高いサービスの提供は難しいとの深刻な実態がアンケートに報告されている。中には「募集をかけても面接すらないという状況」、「介護難民は出現しはじめている」という声すら届いている。


■「今後、新たに導入していきたいサービスや設備の予定はありますか」
 多くのホームで共通したのは人手不足関係を補う機械警備や設備関係、介護面では現状では実現できていない24時間の看護体制やターミナルケア、このほか、入居者の精神面や健康面ではアロマテラピーや美容師などのそれぞれの専門職によるリフレッシュサービスを望むところもあった。



●行政は介護現場見る眼を●
〜道路財源の見直しなど、知恵と工夫を望む〜


総量規制に反対多く
〜財源難の理解と介護報酬への不満〜


■「総量規制についてはどのように受けとめていますか」
 総量規制とは介護財源の問題から、厚生労働省が介護型の有料老人ホームの新たな建設を規制したものだが、これについては回答を行ったほとんどすべてのホームが反対や明確な反対ではなくても規制の主旨そのものに疑問を持っている。
 まず、需給のバランスから、今後ともさらに高齢者が増えていく中で、公共施策(特養等)が数に限界がある中で規制そのものが現実的でないと回答する。さらにこのままの施策を続けると、どこにも行き場のない介護難民の人が増えると指摘する。
 一方、総量規制により住宅型有料老人ホームや高専賃など多様化したホームや住居が出来つつあることを消費者のニーズに応えるものとして認める声もある。
 しかし反面、そうした多様性が最近の消費者とのトラブル増加の一因になっていると指摘する声もある。
 また、総量規制のため、介護型で始めることができなかったというホームからは、「早い者勝ち」で特定施設を認可するのではなくて、選考の基準を明らかにしてほしいとの声も寄せられた。


■「現在の介護保険についてはどのようにお考えですか」
 現場の一線で介護に携わるほとんどの事業者は、このままでは近い将来、介護保険制度は財源の面から破綻すると考えていることがわかった。しかし、そうした財源面への理解を示す反面、制度の改正によって介護報酬の減額がホームの経営を圧迫するとともに、入居者に質の高いサービスを提供できないという矛盾を抱えている姿がうかがわれる。
 民間事業としての有料老人ホームの経営的側面と社会保障制度の一つである介護保険との兼ね合い、さらに”介護”という単にビジネスだけの視点では解決できない問題等、真剣に取り組むホームほど悩みも多いという実態がうかがわれる。



高齢者問題は国家規模で
〜重視する異業種との連携〜


■「厚生労働省や地方行政に対して望むことはありますか」
 テーマが広いため回答が多岐に分かれた。介護保険を含めたわが国の社会保障制度体制について危惧する意見と、厚生労働省の担当者が、高齢者問題の実態を数字の上だけでしか把握していないのではないかという強い不信感が根底にうかがわれる回答が多かった。
 ほとんどの回答者が厚生労働省にとって、財政問題の解決は至上命題であることは認識しており、今回の後期高齢者医療制度の導入も、介護保険とともに医療保険制度そのものが破綻の危機にあることを十分認識しており、やむなしとの見方も少なくなかった。しかし反面、「従来になかった知恵と工夫」を使って、あるいは「道路財源など国家的ワクで解決」を図らなければ、日本の直面する高齢者問題は乗り切れないとする意見が目立った。
 このほか、具体的な要望では、「医療・介護・福祉の三位一体が実現できるしくみを」、「地域包括支援センターのあり方を再考してほしい」、「介護報酬の上方見直しをしてほしい」、「ホームの監査マニュアルではなく運営マニュアルを作成してほしい」等が寄せられた。


■「医療や薬系、食系など異業種企業とのコラボレーションに関心はありますか」
 7割以上のホームが「今後は異業種との交流が必要となり、共同して運営できる施設を創設することが重要」と答えている。「介護事業自体が医療や薬系、食系とは切り離せない」と考えるところが多く、関連業種とのコラボレートに強い関心を持っている。
 とくに介護の重度化では、医療機関との連携はなくてはならないものと捉えており、「高齢者にとって食事は一番の楽しみ」とするホームでは、低温真空の調理法や自然素材へのこだわりなど食材企業との接点を求めている。
 このほか、入居者の生きがいや趣味のため、レクリエーションや美容、講座など異業種とのコラボレートを検討するところも多い。
 あるホームでは80歳になる入居者の女性を対象に化粧品の販社がメークの実演会を行ったところ、最初は躊躇していた女性も次第に楽しみにするようになり、生活も活発になってきたとの報告も見受けられた。