「健康」「介護・介護予防」「住まい」のシニア・シルバー層の新市場情報
| レポート / 有料老人ホームと高専賃(08年5月) |
| ●多彩な業種の参入● |
| 〜ニーズの2極分化が顕著に〜 |
2005年12月に制度導入された高齢者専用賃貸住宅(高専賃)は、わずか2年数カ月で全国2万戸にまで拡大し、その増加の速度はさらに加速している。しかし一方では、2008年3月26日に高専賃運営の大手ナラワ(千葉市)が負債約6億7000万円で、民事再生法適用を千葉地裁に申請したように、参入企業の経営基盤やコンセプトの脆弱さも指摘されている。高専賃を取り巻く制度的な環境を含めた諸問題と全国的な市場の可能性を中心にレポートする。
| 2008年中に3万戸も |
2008年5月3日付の高専賃の全国市場は、(財)高齢者住宅財団の登録によると、総登録824件、総戸数1万9739戸と2万戸が目前だ。
ここ数年、急速な伸長を遂げた有料老人ホームの市場が全国で約3000カ所、入居数約12万数千人前後と推測されており、入居者比率では高専賃は有料老人ホームの12〜13%前後となっている。
有料老人ホームは総量規制の影響が大きく、昨今では足踏み状態となっているが、高専賃は医療法人の参入も解禁されたこともあって、医療法人の進出も目立ちつつあり、さらに不動産業者から介護サービス事業者まで多彩な参入が相次いでおり、今年中にも3万戸の突破が予測される。
中でも医療法人の参入の動きについては、「現在、療養病床を運営する病院の経営者の多くは、療養型老健への転換に難色を示している。その最も大きな理由は転換すれば介護報酬が2割ほど低くなるためだ。それならば規制のほとんどない高専賃の方が運営がやり易いと思っているところもある」とある医療関係業界紙記者はその事情を語る。
この記者が語るのは、5月からスタートした新しい介護施設「介護療養型老人保健施設(療養型老健)」のことである。
現在、全国の病院には約35万床近くの療養病床があるが、約23万床が医療療養病床で約12万床が介護保険の介護療養病床である。厚生労働省は2011年度には介護療養病床を全廃し、医療療養病床も減らすことにしている。
療養型老健はこの廃止される療養病床の主要な受け皿として設定されたわけだが、スムーズな転換は期待薄のようだ。有料老人ホームや高専賃が療養型老健に替わって注目されているが、ホームや高専賃を合わせても、その数の上からもとても療養病床の代わりをできるわけはなく、医療関係者からはどこにも行き場のない介護難民を危惧する声も大きくなっている。
| 企業コラボレートが活発 |
総合ユニコムが2008年3月13日東京都で開催した「シニア・ヘルスケア事業シンポジウム2008」では、高専賃事業の可能性についてもテーマの1つとして取り上げられたが、会場には医療、介護、不動産など各分野から多くの参加者が集まり、熱心に意見交換をした。
最近の高専賃市場への参入企業の特徴として、ファンド資金を活用するケースと医療機関とのタイアップケースが目立ち始めている。
ファンド資金は一般の不動産やマンション市場が頭打ちとなっており、高専賃を取り巻く制度面や人口構造面などの諸状況が魅力と映っており、ファンド資金が流入している。
こうしたことから反面、これまで介護や医療と無縁であった企業の参入も少なからずあり、医療機関とのタイアップは異業種企業にとっては不可欠なものとなっているようだ。
3月に民事再生法の適用を申請したナラワは、従来不動産関係の企業であり、入居者を集めるノウハウは有していたが、介護や食事の提供などについてはノウハウ不足が指摘されていた。
| 従来技術の活用がカギ |
昨今の高専賃市場の現状について、岡本弘子・関西有料老人ホーム紹介センター室長は「異業種から高齢者住宅の分野に進出して来る場合、それまで携わっていた業務を少しでも活用して運営に当たることが、事業として成功するかどうかの1つのポイント」と指摘する。
また、(財)高齢者住宅財団の藤原康志・企画総務部長は「高専賃ひと口に言ってもその内容は玉石混交。私どもはより詳細な情報提供と市場原理によって、利用者のニーズに応えていない物件は淘汰されていくのではないかと考えている」と語る。
| 多様化するニーズに対応 |
高齢者住宅のニーズの多様化は高専賃の分野で最も顕著に見ることができる。当初は一般的な傾向として高額の分譲型介護付マンションスタイルが主流であったが、昨年頃から、低価格の様々な介護や生活支援サービスを提供するところも現れ始めている。
千葉県松戸市の生活介護サービスが経営する「ユーカリヒルズ」は、従来の概念であった生活の場を提供する高専賃というイメージから異なっており、重症度の入居者の見取りまでを想定した運営を行っている。高専賃という制度は使ってはいるが、隣接する診療所の第2病棟という役割を担っている。
こうしたケースは極端な事例かもしれないが、多様化する高齢者ニーズに市場が反応していることは確かだ。